第17章 【戦国Xmas】明智光秀編
『もう、光秀さんなんか知りませんっ…!』
瞳に涙をいっぱい溜めて、美依が俺の前から走り去ったのは、つい数日前だ。
お前が話してくれた『くりすます』の話。
是非それを叶えてやろうと、秘密に動いていたら…
逆に美依の不信感を、煽ってしまったらしい。
俺は嘘をつくのは得意だ。
何かを誤魔化すのにも、頭が回るし…
だから、お前にもそう接してきたのに。
だが、お前と恋仲になって気づいた。
どうやら、お前に限っては嘘も誤魔化しも、通用しないのだと言う事を。
────美依、お前を愛しているから
お前が楽しみにしている『くりすます』
それを俺は、ぜひ実現してやりたい。
聖夜と呼ばれる日があるのなら…
真っ白なお前を、鮮やかに染め上げたい。
だから、俺を信じてくれないか?
もう少しでお前を喜ばせられる。
秘密にしていた事を、きちんと話すと約束するから。
俺だけのお姫様に
特別煌めく星飾りを飾ってやろう──……
「光秀様、お待ちください!」
「光秀、お前美依と何かあったのか?」
十二月二十四日、師走も終わりに近づき。
いつもに増して慌ただしい日々の最中…
城から御殿に帰ろうとする俺を、三成と秀吉が呼び止めた。
(……世話焼き兄貴が出てきたか)
俺と美依が恋仲になった当初、激しく反対していた秀吉と、にこにこしながら祝福してくれた三成。
まぁ、最近美依と一緒にいないから…
それを不思議がっても、おかしくはないが。
「別に何も無い」
「嘘つけ。いつも二人で居たお前達が、何日も口を利いてる姿を見ないなんて、おかしいだろ」
「そうですよ、光秀様。何かあるなら相談してください、同じ織田軍の仲間なのですから」
『仲間』とは居心地の悪い響きだ。
俺は単独行動ばかりしていて、仲間意識というものが、とても低いのだと実感している。
特に誰かを頼ったりする訳でも無い。
ただ…ここで『何も無い』を通せば、奴らは美依の所へ理由を聞きに行くだろう。
そうなれば、話を聞いた奴らがまた俺の元に舞い戻り、『何を秘密にしてたんだ』と結局問い詰められる事になる。
二度手間は面倒だ…と、俺は素直に事情を話す事にした。