第16章 【戦国Xmas】徳川家康編《後編》
「これでも、まだ解らない?」
「いえ、や……」
「こんな事するの、あんただけだよ。こうやって一緒に襟巻を巻くのも…口づけしたいと思うのも」
「……っ」
「素直になってあげてるんだから、解って。……美依はどうなの」
こつんと額をくっつけ、顔を覗き込み。
その潤む瞳を、必死になって見つめた。
美依の気持ちが知りたい。
俺の事をどう思っているのか、この言い伝えを俺に言えなかったというのは…
少しは期待してもいいのだろうか。
俺は自惚れてもいいのだろうか。
美依の答えを待っていると…
美依は俺を見つめ返しながら、小さな声で言った。
「私…宿り木の言い伝え、家康に言えなかった。恥ずかしくて…」
「うん」
「でも心のどこかで期待してた。家康と…そうなれたらいいのにって」
「……」
「わ、たし…家康が……」
その淡紅色の唇が紡ぐ言葉は
優しく、儚い雪のように…
俺の心に、降り積もって染み渡る。
「家康が、すき」
(……っ、これまずいな……)
気持ちを聞いといて、白状させた途端。
照れて恥ずかしくて、美依を見れない。
それは、今の美依がいつもより、ずっとずっと可愛く見えるから…
目の前が鮮やかになって、煌めいて。
もう、美依しか見えないくらい…
赤くなった美依が愛しくて堪らない。
「んっ……!」
俺は衝動的に美依の後ろ頭を引き寄せ、そのまま唇を塞いだ。
見ていられなかった。
奪いたくて、すぐに美依を感じたくて。
もっと触れたくて…えげつないくらいに。
柔い温もりが移ってくる。
美依の湿った温度。
くらくらするくらいに…甘い。
(美依っ……)
俺は唇の隙間から舌を差し入れ、美依のそれも誘い出す。
おずおずと舌が差し出された瞬間、貪るように全てを絡めとった。
吐息も何もかも、混ざり合いたくて。
もっと気持ちが伝わるように、と。
美依の腰を引き寄せ、後ろ頭を固めて。
逃げる隙すら作らないように、美依を捕らえて奪った。