第16章 【戦国Xmas】徳川家康編《後編》
「あんたが風邪引いたら、うるさい連中がいるでしょ。俺だって風邪は引きたくない、ならこれが一番の解決策」
「あ、そ、そうだよね…」
「……嫌なら、いい」
「い、嫌じゃないよ!」
(……目まで赤くなってる、可愛い)
美依の声にちらりと見てみれば、目を輝かせてるのが視界に映って。
……馬鹿みたいに可愛いと思った。
また期待するじゃないか、色々と。
そのまま美依と寄り添いながら、再度歩き出す。
美依は無言のまま俺に肩を抱かれ…
真っ赤な顔をしながらも、大人しくついてきた。
────これって期待していいのかな
淡い感情が心を支配して、息苦しくなる。
美依は俺の事、どう思っているのか。
すき?
きらい?
ただの知り合い?
それとも…
ぐるぐると思いが渦巻く。
腕に感じる温もりが、さらにそれを加速させて…
宿り木に着くまでの間、終始無言になってしまったのは言うまでもない。
*****
「え、これって宿り木……?!」
目的の木に到着すると、美依はそれを見上げながら、小さく声を上げた。
もうすでに葉の落ちてしまっている枝のあちこちに、その木とは違う緑の葉が球体になって付着している。
『宿り木』とは、常緑で半寄生の灌木(かんぼく)だ。
母体となる木に寄生し、葉を伸ばして成長していく。
ちなみに、氷雪の中でも葉の緑を保っていることから『忍耐』や『克服』と言った意味も持つとか。
雪の中、鮮やかな緑を保つ宿り木。
そんな神秘を感じさせるとこから、妖精が宿るとか、色々言われていったのかな…なんて、ふと思った。
「そうだよ、宿り木」
「なんで、ここに来たの……?」
「……それは、あんたが一番意味を解ってるんじゃない?」
「……っっ」
すると間近にある美依の顔が、また真っ赤に染まった。
それは一体、何を期待しているのか。
俺に口づけられる事、嫌じゃないなら拒まないでほしい。
俺は雪降る中、宿り木の下で美依と向き合い…
ここへ連れてきた理由を、改めて口にする。