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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第16章 【戦国Xmas】徳川家康編《後編》





────真っ暗で粉雪が舞う中


美依の小さな手を引き、白く染まり始める安土の町中を歩いていく。

ほやは、確か町の外れにあった。
冬でも緑の葉を伸ばし、実をつける木。
きっとそれが『宿り木』だ。

今は夜で、しかも雪が降っては、外はかなり冷え込んでいる。

俺自身、そこまで寒さは感じないが…
だが、美依はとても寒かったのだろう。

くしゅん、と小さなくしゃみが聞こえ、俺はそこで初めて立ち止まり、美依の方を振り返った。




「あ、美依…寒い?」

「少しだけ……」

「ごめん、気づかなくて。それじゃ寒いね」




改めて見れば、美依は何も防寒具を付けていなければ、着物に薄めの羽織を着ているだけだ。

それは当然。
城に居たのを、無理やり引っ張って来てしまったのだから。

俺は一回手を離すと、自分の羽織を脱ぎ…
そっと美依の肩に、それを掛けた。




「え、いいよ!家康が寒いでしょ?」

「俺は寒くないから。あんたが風邪引いたら、秀吉さん辺りがうるさいでしょ」

「うー、でも……」

「俺が勝手に連れてきたんだから、大人しく着てて。襟巻もいる?」

「え、だ、大丈夫だよ!」

「でも、まだ寒そう」




そう言ったら、自然に伸びて。
美依の頬を指の背で撫でると、美依はぴくっと肌を震わせた。

冷たくなってるな、風邪引いたら心配だ。
だが、襟巻を外したら、正直俺も寒いかも。

色々考えた挙句…
俺は自分の首から襟巻を取ると、まず美依の首にふわりと巻き付け。

その端を、自分の首にも巻き付けた。
美依にぴったり身を寄せていれば、一本の襟巻を二人で巻くことも可能である。




「い、いえや、す……」




すると、間近にある美依の顔が、照れたように真っ赤に染まった。

俺だって、こんなの恥ずかしい。
でも…お互い寒いのなら、こうするしかないだろう?

俺は自分も照れているのを無視し、美依の肩を片腕で抱き寄せる。

そして、若干目を逸らしながら、相変わらずな天邪鬼な台詞を吐いた。






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