第13章 【現代パロディXmas】石田三成編《前編》
「────お疲れ様です、美依さん」
(────…………っっ!)
耳元に触れた温かい吐息に、私は思わず身体がびくっと跳ねる。
びっくりして振り返ってみれば…
今まさに心に思い描いていた人が、缶コーヒーを持ってにっこり笑っていた。
「三成先輩…!」
「こんな時間まで残って…無理は駄目だと言ったでしょう」
「先輩こそ、どうして……」
「私も今帰るところだったんですが、もしかしたら…と思って覗いたんです。案の定でしたね」
「す、すみません…」
先輩にコーヒーを渡されながら、赤くなって小さく俯く。
まさか、先輩が心配してくれるなんて。
しかも、こうやって差し入れまで…
嬉しすぎて、それこそ涙が出そうになってしまう。
すると先輩は、後ろからパソコンを覗き込み、マウスで画面をスクロールさせながら、穏やかな声色で言った。
「半分ってとこですか」
「は、はい…」
「まさか、朝まで残業する気ですか?」
「う……」
「今日はイヴなのに、寝なきゃサンタさんは来ませんよ?」
先輩がクスクス笑う。
顔の間近にある綺麗な笑みに、ドキドキしながらも…
少し子供扱いされたようで、心がチクりとした。
まるで、眼中に入ってないと。
そう言われてるようで、少し腹が立つ。
私はコーヒーの缶を開けながら、思わず先輩に反論するように、少し強めの物言いで言った。
「もうサンタさんなんて信じる歳じゃないです」
「あれ…プレゼント、欲しくないんですか?」
「そりゃ欲しいですけど……」
「……案外、望めば手に入るかもしれませんよ」
「え?」
先輩の言葉に、思わず目を輝かせる。
すると、後ろから腰を折って画面を覗き込む、先輩の視線がこちらに向けられ…
その色っぽい菫色の流し目に、心臓がどくりと高鳴った。
そして、その形のいい唇から…
艶のある、意味深な言葉が紡がれる。
「プレゼント、欲しいですか?
望むなら……あげますよ、貴女に」
(え……?)
その言葉に、ますます鼓動が速くなる。
先輩、何言ってるんだろう。
これじゃまるで、
先輩が、私に与えてくれるみたいな……