第13章 【現代パロディXmas】石田三成編《前編》
「どうですか、美依さん?」
「せん、ぱ……」
「欲しいですか、欲しくないですか?」
「……っっ」
まるで、誘惑するような甘い響き。
危うい魅力をもった、妖しい囁き。
でも、それに抗う事が出来ず。
私は誘われるがまま…
「欲しい、です……」
気がつけば、そう答えていた。
すると、先輩の唇の口角が上がり。
先輩は自分の首元に指を掛け、しゅるり……とネクタイを引き抜いた。
────次の瞬間
「────…………!!」
そのネクタイで目元を覆われた。
突然視界が真っ暗になり、何も見えなくなる。
思わず手から缶が滑り落ち…
それは私の膝に当たって、カランカランと床に転がった音がした。
「おや、コーヒーが膝にかかってしまいましたね」
「ちょっ、先輩っ……?!」
いきなりの出来事に頭がついて行かず。
若干パニックになりながら、声を上げる。
すると、頭の後ろでネクタイが縛られた感覚がして。
耳元で、甘い声が囁いた。
「人間、視界を遮られると…より感度が良くなるそうです」
「え……?」
「欲しい、と言うならあげますよ、美依さん」
「……っっ」
「────貴女に、私を。
私の事、好きでしょう……?」
それは、菫色の誘惑。
見えない視界の向こうで──……
先輩の紫色の瞳が、妖しく笑った気がした。
いつしか、窓の外には雪が降り始め
都会の街並みを、銀世界に染め始めていた
でも、私がそれを知るのは
もうしばらく経ってからのこと
閉ざされた視界の先にある
菫色の鎖に囚われて……
甘い熱情を受け入れた
その後に、知る事実
ホワイトクリスマスは鮮やかに染まる
触れる熱い指に翻弄された
そんなイヴの夜
望んで現れた、私のサンタさんは
天使なのか、悪魔なのか
それを知る術はなく
艷めく夜は幕を開けたのだった──……
イケメン戦国現代パロディXmas編
第二話、石田三成〖前編〗終
〖後編〗に続く────…………