第13章 【現代パロディXmas】石田三成編《前編》
────その日の、深夜
私は独り会社に残り、パソコンに向かっていた。
頭から作り直せと言うなら、ダメだった資料を元にして作り変えては意味がない。
だったら、真っ新に新しいものを。
そう思い、一からまったく新しい切り口で文章を作成していく。
…と、言葉で言うのは簡単で。
実際には、ものすごく手こずっていた。
前のプレゼン資料を、片っ端から漁ったりして、なんとかいい文句がないか考える。
そんな事をやっていたら、もう時計の針は11時半を過ぎ…
その年のクリスマスイヴも、結局何もないまま終わろうとしていた───……
「ふぅぅ~…ちょっと休憩…!」
区切りのいい所まできて、私は思いっきり伸びをした。
とりあえず半分終わったから…と。
少しだけ安心し、ほっと息をつく。
だが、時計を見て驚いた。
「え…もう11時半……?!」
あまりに没頭していたから気が付かなかった。
もう終電も終わってしまう。
それを考えたら、一気にガッカリしてしまった。
どこかホテルを探すしかない。
イヴに仕事で残業して、帰れずにホテルなんて…
(悲しいし、寂しすぎる…!)
そんな事を言っても、自分で蒔いた種だ。
最初から部長を納得させられる資料を作っていれば、こんな事にはならなかったのだから。
ケーキも食べられそうにないし…
私のクリスマスって?と思いながら、小さくため息をつく。
────三成先輩、どうしたかな
ふと、あの優しい笑顔が心に浮かんだ。
先輩のことだ、きっと素敵な彼女と楽しいクリスマスを送ってるはず。
美味しいディナーとか食べて、プレゼントとか交換して、夜はもちろん……
そんな事を考え、ずんと心が沈んだ。
なに見たこともない女の人に嫉妬してるんだろう。
私じゃ、先輩に釣り合うはずないんだから。
優しい笑顔
穏やかで、寝癖が可愛い
私の、大好きな人
思い出すだけで
こんなに愛しいよ、先輩──……
思わず涙目になって、ぐすっと鼻をすする。
だが、次の瞬間。
突然ふわりと頬に温かいものが触れ…
耳の少し後ろから、やたら色っぽい囁きが聞こえてきた。