第13章 【現代パロディXmas】石田三成編《前編》
(今日も穏やかで、素敵だなぁ……)
資料に目を通す三成先輩を見ながら、思わず小さく息が漏れる。
薄灰色のサラサラとした髪。
色っぽく細められた、菫色の瞳。
細身で背の高い、スラリとした身体付き。
黙っていても色香の滲み出る…
フェロモンたっぷりなのに、爽やかな先輩。
女の子がキャーキャー言うわけだよな、と。
見ていると、改めてそう思う。
なんて事ない仕草も綺麗で、なんか目が離せないし。
今日はクリスマスイヴだけど…
先輩は彼女と過ごしたりするのかな?
(いいなぁ、その彼女……)
私なんて、きっと気にも止めていない。
今回一緒にプレゼンするのだって初めての事だ。
いつも私は見ているだけで…
話しかけるのですら、いっぱいいっぱいになってしまう。
「美依さん、とても素晴らしい資料ですね」
今年のクリスマスも、私は一人だな。
仕方ないから、帰りにケーキでも買おう。
「美依さん、あのぅ、美依さん?」
先輩は甘いもの好きなのかな?
今度お茶でも…とか、無理無理無理!
はぁ〜、奥手だな、私……
「……美依さん」
「ひゃあっ!」
突然耳元で囁かれ、私は素っ頓狂な声を上げた。
見れば、先輩が有り得ない近さで私の顔を覗き込み…
不思議そうに、首を傾げていた。
「私の顔を見ながら固まっていたかと思えば、百面相をしたりして…どうかしましたか?」
「へ?!い、いえ、なんでもないですっ」
「ならいいんですが…明日のプレゼン、一緒に頑張りましょうね」
間近で、先輩がにっこり笑う。
そのあまりに綺麗な笑顔に…
私は思わず俯き、赤い顔ではいと答えた。
思わず見惚れていた自分が情けない。
先輩を前にすると、私が変になる。
どうしたらいいか解らないし…
変な子だと思ってるだろうなぁ、先輩。
私の想いは、きっと成就はしない。
だから、見てるだけでいいや…なんて。
サンタさんにお願いすることも無く、私ははなから諦めていた。
良い子の所にはサンタさんが来る。
そんな話は、大人になって信じなくなったけど…
欲しいものも、願わなくなったなぁって。
私はちょっと寂しくなったのも、また事実だった。