第13章 【現代パロディXmas】石田三成編《前編》
────クリスマスには奇跡が起きる
憧れだった、あの人と
近づけるチャンスが訪れるなんて
それはサンタさんの贈り物だったのかな
ずっと見ていただけだったのに
あの人は話しかけてくれた
それは、とても嬉しかったのだけど…
近づきすぎは、要注意?
サンタさんの悪戯なのか
はたまた、悪魔が降臨したのか
私にはどちらか解らない
貴方が見せた、その裏側に
私は囚われ惹き付けられる
『三成先輩』
貴方がすきです
貴方がだいすきです
だから、私をもっと困らせて?
聖夜に舞い降りた菫色の誘惑
誘う色香に魅せられて──……
「三成先輩っ!」
勇気を振り絞って、私はその人に声をかける。
すると、声をかけられた本人は爽やかな仕草で振り返り、その菫色の瞳を優しく細めた。
底冷えのするような、クリスマスイヴの今日。
今日も相変わらず、私は勤務している『MAOH.com』で、せわしなく働いていた。
私はこの会社で、デザイナーをしている。
何も威張れるとこなんてない、勤務二年目のまだまだ新米社員だ。
専門学校を卒業し、そのまま採用されて働き始め…
毎日てんてこ舞いだけど、やりがいのある仕事に、とても充実した日々を送っている。
……だが
夢だったデザイナーとして働けることだけじゃなく、実はもう一つ。
今の会社で働けて、良かったなぁと思う理由があるのだ。
それはね…?
『三成先輩』の存在だ。
「美依さん、どうしましたか?」
「明日のプレゼンの資料が出来たので、目を通してもらえたらなと」
「ああ、ありがとうございます。明日は貴女が補佐に回ると聞いていますよ、よろしくお願いしますね」
資料を受け取り、先輩がにっこり笑う。
その笑顔に見惚れるように…
私も自然と笑みを返していた。
私と同じチームの、三成先輩。
彼は同僚の女の子達の憧れの的だ。
仕事が出来て、格好良くて、でも穏やかで優しい。
たまに寝癖が付いたりしているのも、どこか憎めなくて。
そんな先輩に私も密かに想いを寄せていた。
この人と一緒のチームに選ばれて…
本当に泣きたくなるほど嬉しかった。