第12章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《後編》
「兄貴と居る方が、もっとドキドキする」
「え……?」
兄貴の方を見てみれば、目を見開いて私を見ていた。
その瞳には私が写っていて。
困ったような、今すぐ泣き出しそうな。
そんな私が兄貴の瞳の中に居る。
もう、素直に話すんだ。
思っている事、全部。
私の気持ちを──……
兄貴にも知って欲しい。
「兄貴に触れられるとドキドキして、切なくて、胸が締めつけられるの。おかしくなりそうなくらい」
「美依……」
「流されてるって解ってるのに拒めなくて、抗うことも出来なくて、あの夏の日だって、私……」
「……っ」
「ねぇ、お兄ちゃん」
身体ごと、兄貴に向き直る。
そして、必死に見つめ……
思っている事を、全部唇から溢れさせた。
「どうして私にあんな風に触れるの?なんで、キスしたりするの?私はお兄ちゃんの妹なのに…妹なのに、どうして──……」
「あの夏の日、私を抱いたの──……?」
暑い暑い、焦げつくような部屋で
触れ合った熱い肌、絡み合う汗
温度も、匂いも、濡れた音も
何もかも鮮明に覚えてる
兄貴の蒼い瞳が、熱を孕んで光っていて
見たことも無いような……
『男の人』の顔をしていた
あんな風に甘い声で名前を呼ぶ
そんな兄貴を、私は初めて知った
そうなったのは
一体、何故───………?
「……そんなの、決まってんだろ」
すると、兄貴はぽつりと呟き。
いきなり、私の腕を掴んだ。
そして、ベランダから部屋へと戻り出す。
腕を掴まれたまま、強く引っ張られ……
痛いと抗議する間もなく、私は部屋のベッドへと放り投げられた。
身体は兄貴のベッドで弾み、何が何だか解らず起き上がろうとした、直後。
────ギシッ!
「────…………っ!」
私に覆いかぶさってきた兄貴の重みで、ベッドが軋んで音を立てた。
半身を私に預け、顔の横で腕を付き。
その二本の腕の間から、兄貴を見上げれば……
兄貴は『兄貴』の顔じゃなく
あの、夏の日に見せたような……
『一人の男』の顔つきになっていた。