第12章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《後編》
「てめっ……!」
兄貴は一声吠えると。
持っていた紙袋を床に放り投げ、早足で私達に近寄った。
そして、光秀さんの肩を掴み、私の身体から引っ張り起こす。
そのまま向かい合い、胸ぐらを掴んで……
まるで噛みつきそうな剣幕で、光秀さんに凄んだ。
「妹に何やってんだ、ぶっ飛ばされてぇのか?!」
「……政宗」
「んだよ!」
「お前にとやかく言われる理由が、何かあるのか?」
「……はぁ?!」
「俺はもう言ったぞ、割と本気だと。何故お前はそのようにムキになる…美依は『ただの妹』だろう?」
(兄貴……)
声を荒らげる兄貴とは裏腹、光秀さんは冷静で。
まるで兄貴をわざと煽ってるみたいに、淡々と物申す。
私は何も言えず、ハラハラしながら二人の様子を見守るしかなくて。
二人が睨み合うのを、息も出来ずに見ていた。
「……っっ」
やがて──……
睨み合いが続いた後、兄貴は割と落ち着いた様子で、光秀さんの胸ぐらから手を離し。
私と、光秀さんと。
二人を鋭い視線で一瞥した。
「……煙草、吸ってくる」
「あ、兄貴……!」
私の声なんて聞いてないかのように無視し、兄貴はベランダへと足を向ける。
外は雪が降っているのに……
兄貴はベランダに一人出て、煙草を吸い始めてしまった。
「どうしよう、兄貴怒ってる……!」
「そうだな、激怒しているな」
「…………っっ」
いつもの兄貴なら、私がどんなにからかわれていても、笑って見ていた。
光秀さんが、私にどんなに触れようが……
しょうがないなって感じだったのに。
なんで、あんなに怒ったんだろう。
私が光秀さんに、何かされてると思ったから?
それで、あんなに怒ったの?
しかも──……
『美依は、ただの妹だろう?』
光秀さんのその一言に。
兄貴は答えることをしなかった。
むしろ、答えられないと……
そんな空気すら、漂っていた。
────なんで『そうだ』って答えないの?
私がベランダの外にいる兄貴を見つめていると、光秀さんのふっと笑った声が聞こえ…
掛けてある自分のコートとマフラーを取ってから、私の傍に来て、優しく肩をぽんと叩いた。