第11章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《前編》
「ほんっと、心臓に悪い…政宗兄貴といい、光秀さんといい……」
キッチンの戸棚の前にしゃがみ込み、独りぼそぼそと独り言を繰り返す。
私は下の戸棚からお皿を出しながら…
さっきの部屋での出来事が、頭の中で何度も繰り返され、すでにパンクしそうになっていた。
『俺の女にしてやってもいいぞ』
光秀さんの意地悪は、強烈だ。
今に始まった事じゃないけど…
それでも、あの甘い色香に当てられるたび、私はどうしていいか判らなくなる。
私は、光秀さんが好きなのかな?
だって、すごくドキドキするし。
光秀さんは素敵な人だし…
あんなカッコイイ人が彼氏になったら、最高だろうな。
────……でも
『なんだ、もっとして欲しいのか?』
(兄貴……)
あの不敵な笑みを思い出すだけで、胸がぎゅっと締め付けられた。
吸い込まれそうな、蒼い瞳。
いつでも強引に触れてくる、大きな手。
それらは私を掻き乱し、落ち着かなくさせるのだ。
いつも余裕たっぷりで、私一人であたふたしてるのが、馬鹿らしいくらいに。
兄貴はどういうつもりなんだろう。
あんな風に触れたりする意味って?
「本当に参っちゃう……」
「────何が参っちゃう、なんだ?」
(……へ?)
突然耳元で聞こえた囁きに、私は思わずびくりと身体を震わせた。
背後に気配を感じて振り返ってみれば、私を囲うように戸棚に手を付き…
腕の間に私を閉じ込めた政宗兄貴が、にやりと可笑しそうに笑っていた。
「あ、あああ兄貴……!」
「帰って来ないかと思えば、ぶつぶつ独り言言って、どうしたんだ?」
「な、な、何でもないよっ……!」
(近い近い近い近い近い……!)
私と同じようにしゃがんでいる兄貴。
たくましい腕の中にすっぽり収まってしまい、吐息がかかるほど近くて、また心臓が高鳴り始めた。
どうして政宗兄貴は、こうスキンシップ過剰なのか。
こんな事されて、ドキドキしない方がおかしいでしょう!
私がそっぽを向いて顔を赤くしていると……
兄貴は片手で私の顎を掴み、くいっと後ろに振り向かせた。