第11章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《前編》
明智光秀さん。
政宗兄貴の同僚の男の人。
光秀さんは兄貴と仲が良くて、しょっちゅうマンションにも遊びに来ていて。
そんな光秀さんは、少し変わった人だ。
ミステリアスで、少し意地悪で。
私はすぐにからかわれるけど……
でもすごく大人で、素敵で、カッコイイ。
────私が、今とっても気になる人
「お、光秀。悪かったな、先に来てもらって」
「いや、存分につまみ食い出来たぞ」
「てめっ…まさか作っといたケーキ、手ぇつけたのか?!」
兄貴が私の後ろからドアを掴み、がんっと光秀さんを睨みつける。
すると、光秀さんの黄金の瞳が意地悪そうに細められ……
ふっと笑い、形のいい唇が言葉を続けた。
「冗談だ、政宗」
「ったく、お前は……」
「ふっ、ふふっ…兄貴が焦ってる」
「笑うな、美依!」
「美依、相変わらず笑顔が可愛いな」
「え、あ、ありがとうございます」
急に話を振られ、今度は私が焦る番。
そんな私を見て…光秀さんは私の頭を優しく撫でた。
大きな手、大人の男の人の手だ。
それは、何故か心地よくて……
でもそれだけじゃない。
(嬉しくて、ドキドキする)
光秀さんを考えると、心臓が高鳴る。
もっと一緒に居たくなって、背伸びをしたくなる。
大人な私になって、この人に釣り合いたいと。
もっと私を見てって、思うんだ。
これって、恋なのかな。
兄貴に対する『ドキドキ』とは全然違う。
あんな切なくて、訳わかんない感情じゃない。
────兄貴と居ると、おかしくなるから
「美依、中でツリーでも飾りつけるか?」
「はいっ、やります」
「光秀には本当に懐いてるよな、お前」
「兄貴はさっさと料理を準備してくださいっ」
こうして、私と兄貴と光秀さん。
三人で今年のクリスマスイヴは過ごす事になった。
苺たっぷりのケーキと。
兄貴お手製の絶品料理と。
それから光秀さんが居れば……
最高にハッピーなクリスマスイヴになる筈だったのに。
聖夜の真っ白な世界は、鮮やかに色づく。
私のあやふやな想いも、輪郭がハッキリと鮮明になって……
生涯忘れられない、運命的な一夜になるのだ。
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