第11章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《前編》
八つ年上の私の兄貴、政宗。
幼い頃に両親が離婚し、私は兄貴に育てられたようなものだ。
いつも傍に居て、面倒見てくれて。
泣いてると励ましてくれた。
誕生日を毎年祝ってくれた。
政宗兄貴は…本当にかけがえの無い家族。
いつもカッコよくて、料理が上手くて。
私はブラコンと言われようが、いつもいつも兄貴にくっついて回っていた。
だから、私は兄貴が大好きだけど……
最近、ちょっと悩んでしまっている。
兄貴に対する『好き』と言う感情。
でもそれが、『普通の妹』とは違う気がして。
一体、どう言う事かと言うと──……
「ケーキはお前が好きな苺ケーキにしたぞ」
すいすいと車が滑らかに走る。
私の隣でハンドルを握りながら……
兄貴が、そう得意げに言った。
顔を見れば、余裕たっぷりに笑っていて。
それを見て、私もふふっと笑みを零す。
「嬉しいー!いっぱい乗ってる?」
「おう、上にも中にも、ぎっしりだぞ」
「やった!ありがとう、兄貴」
「そんなに嬉しいか?」
「うんっ!」
「なら…お前からご褒美もらおうか」
「へ…ご褒美?」
私が聞き返すと、車がいきなり止まった。
気がつけば、車は信号に引っかかったようで。
政宗兄貴が、片手をハンドルに添えながら、にやりと笑って私を見た。
(ご褒美って……何?)
意味が解らず、思わず兄貴を凝視する。
すると、見る間に兄貴の顔が近づいてきて……
ちゅっ
音を立てて、私の頬を啄んだ。
───………へ?
「なんだ、無反応かよ。じゃ、もう一回」
兄貴がボヤき、再度温もりが移る。
さすがに、これには私も気がついた。
私は慌てて、兄貴の頬に手を当て、ぐいっと引き剥がし……
我ながら火照った顔で、このバカ兄貴をキッと睨みつけながら、声を荒らげた。
「な、な、なにすんのっ……?!」
「お前からケーキのご褒美もらっただけだ」
「はぁー?!」
「なんだ、もっとして欲しいのか?」
「何言ってんの、バカ兄貴!」
一人で慌てふためく私とは裏腹、兄貴は憎たらしいくらいに余裕で。
もっと文句言ってやらないと気が済まないと思っていたら、後ろからププーっとクラクションを鳴らされた。