第11章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《前編》
────心臓が高鳴る音がする
ドキドキ、ドキドキ
私の鼓動が、痛いくらいにうるさい
触れられるだけで、
その笑みを見るだけで、
張り裂けそうに、切なくなる
でも、これは恋じゃない
恋はもっと楽しいもので
幸せで、嬉しいものだから
だから、私をこんな気持ちにさせないで
気まぐれに唇に触れて、
強引に抱き寄せる腕が、
そんなに優しいのは、何故?
その理由を、知りたいけど知りたくない
────兄貴
そう、あなたは私の兄貴なんだから
「おい、美依!」
不意に呼ばれた声に、私は顔を上げる。
視線の先、校門の所には、私の見慣れた姿があって。
私はその姿を見た瞬間、素っ頓狂な声を上げた。
「政宗…兄貴?!」
濃青のスポーツカーにもたれかかり、スーツ姿でこちらにヒラヒラ手を振るのは、間違いなく私の兄貴だ。
どうしたんだろう。
こんな風に学校に来るなんて。
そう思いながら、私は小走りで兄貴の傍に駆け寄った。
「兄貴、どうしたの?仕事は?」
「今日は外回りからの直帰。で、可愛い妹を迎えに来てやった」
「わぁ…ありがとう!」
「満員電車に乗らなくていいんだから、感謝しろ?」
そう言って、兄貴は指の背で私の頬を優しく撫でた。
その硬く骨張った感触に、思わずドキリと心臓が高鳴る。
(……なんでこーゆー触り方するかなぁ)
普通、恋人にするんでしょ、こーゆーのは。
指で頬を撫でるとか……
私が思わず視線を逸らすと、政宗兄貴は顔を覗き込んできて。
可笑しそうに目を細めると、口角をにやりと上げて見せた。
「顔赤いぞ、美依」
「そ、そんなこと、ないっ」
「ほら、さっさと帰るぞ。今日はクリスマスパーティを一緒にやるんだろ?ケーキ作っといたから」
「え、本当に?!」
兄貴の一言に、私は目を見開いた。
びっくりする私を見て、満足気な政宗兄貴。
今度は頭をぽんっと撫でる。
「ああ、おかげで寝不足。だから事故っても文句言うなよ?」
「えーそれは困る!」
ケーキの存在で、すっかり気分を良くした私は、兄貴に向かって笑みを浮かべた。
すると、兄貴も優しく笑って……
再度くしゃりと頭を撫でたのだった。