第10章 【童話パロディ】シンデレラ《後編》/ 豊臣秀吉
「今は王子じゃない、お前を愛する、一人の男だ」
見れば、瞳が熱を帯びて揺れていた。
まるで、昨日の夜のように……
「言っておくが、これでも頑張って平常心を保ってるんだからな」
「え、嘘……」
「嘘じゃない、可愛いお前を目の前にして…またどうにかしそうなくらい、心がざわついてる」
「……っ」
ゆらゆら揺れる、恋心。
好きな人と触れ合って、抱き合えて……
こうした幸せな朝は、何故こんなに泣きたくなるんだろう。
私は秀吉さんの胸に顔を埋め。
照れながらも、泣きそうになりながらも。
必死に胸の内を伝える。
「じゃあ…どうにかしてもいいよ」
「え……?」
「秀吉さんになら、私、は……」
「…ああもうっ……」
秀吉さんの呻くような声が聞こえ──……
次の瞬間、私はまた組み敷かれていた。
「お前が可愛いすぎて…みっともなく溺れちまう。でも、本当に…幸せだ。お前を愛してるよ、たった一人の、俺のお姫様──……」
────信じていれば、夢は必ず叶う
誰しも、真の愛に出会う資格がある。
魔法使いさんが言った言葉は本当だった。
惹かれ合い、触れ合い、そして……
離れても繋がった、私の運命の人は。
こんなに優しく情熱的で、
私をお姫様に変えてくれる、素敵な人だ。
ねぇ、これからも二人寄り添って、
同じ道を、歩いて行けたらいいね。
曝け出した先に、掴んだこの幸せを……
私は決して、離さないから。
「はぁっ…秀吉、さんっ……」
「美依、愛してる、美依っ……」
そして、また吐息を混ぜていく。
貴方に溺れ、満ちていく。
────もう、私を離さないでね?
魔法が消えても、夢は消えない。
硝子の靴も……もう要らないよ?
貴方は私の、王子様。
私をたった一人、お姫様にしてくれる、
この世で一人の……愛しい愛しい王子様。
Fin.
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