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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第10章 【童話パロディ】シンデレラ《後編》/ 豊臣秀吉





────こうして、国中に御触れが広まった



靴の履ける娘を妃にする。
それは、国中の娘達を湧き立たせ……
我先にと靴を履こうとする娘達が列をつくった。

それら一人一人に靴を合わせていく三成。
しかし、その小さな硝子の靴にぴったり合う娘は現れず、時間ばかりが過ぎ。

その噂は当然ながら、美依達の家まで届いた。
勿論、継母と姉達は浮き足立っており……
三成が美依の家を訪れたのは、ある晴れた日の夕方の事だった。















「こちらにも娘さんがいると伺っておりますが」

「はい、おりますよ!私の娘が、その靴の持ち主ですわ!」

「では、こちらに。お一人ずつ履いてみてくださいね」




家の庭先に、硝子の靴が用意される。
それは夕陽を浴び、きらきらと儚い光を帯びていた。

国中を巡った秀吉王子と三成。
ここの家の娘が、最後になると。
緊張した面持ちで、それを見守っていた。




「では、私から!」




まず、長女が意気込んで、靴に足を通した。
しかし、どう見ても、靴の方が小さい。
どんなに頑張っても、硝子の靴を履くことが出来なかった。




「では、今度は私が!」




がっかりする長女を尻目に、次は次女が意気込んで、足を靴に入れる。

……が、やはりつま先がつっかえて、足が入らない。
頑張っても頑張っても、靴を履くことは出来なかった。

三成と秀吉王子は顔を見合わせた。
ここが最後の家の筈なのに……と。

諦めきれない秀吉王子は、継母に不思議そうに尋ねる。




「この家の娘は、二人だけですか?」

「い、いえ…実はもう一人おりますが、今掃除中で……」

「連れてきてくれませんか、お願いします」




王子に言われては隠すことも出来ない。
継母は一度家の中に戻り、屋根裏の掃除をしていた美依を庭に連れてきた。




「これが、うちの三女です」

「……」




連れてこられた娘を、秀吉は無言で見据える。
その華奢な身体付き、ぼろ服を着てはいるものの、滲み出る可憐な雰囲気。

それは、あの夜に出会った運命の娘に、どことなく似ていた。

だが、決定打が欲しい。
秀吉は美依の足元に硝子の靴を置くと、下から美依を優しい眼差しで見上げた。





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