第10章 【童話パロディ】シンデレラ《後編》/ 豊臣秀吉
「あれ……?」
その時、秀吉王子は階段の途中で、きらりと何か光った気がして、目を凝らした。
よく見てみれば、何か落ちている。
近づいてみると……そこには、小さな硝子の靴が落ちていた。
ゆっくり拾い上げれば、微かに温かい。
これは、もしや──……
「あの姫が履いていた靴か……?」
脳裏に、あの可憐な笑みが浮かぶ。
一緒に過ごした、ほんの僅かな時間。
まるでそれが、走馬灯のように駆け巡った。
────それならば、俺は
王子はぎゅっと硝子の靴を握り締め──……
ある決意を胸に、城の中へと戻って行った。
*****
「その靴を履ける娘を、国中から探し出すだと?!」
舞踏会から一夜明け──……
部屋に集まった秀吉王子、政宗王子、家康王子、従者三成。
秀吉王子は硝子の靴を皆に見せながら、自分の胸の内を切々と話した。
「これは俺の愛する姫が履いていた硝子の靴だ。彼女は俺に名乗ることもせず、姿を消してしまった。彼女を見つけるには、そうして国中を探すしかない」
「しかし、秀吉。それは相当骨が折れる事だぞ?国中の娘達に、その靴を履かせてみるのかよ」
秀吉の話を聞いた政宗王子が、呆れたように物申す。
それは当たり前の話である。
この広い国内、何人の娘が居るのやら……
しかし、秀吉王子の決意は変わらない。
凛とした面持ちで、政宗の言葉に頷いた。
「どんなに時間が掛かっても探し出す。彼女は…俺の運命の相手だ。俺と結婚するのは、彼女しかいない」
その言葉には、強い想いが込められていると。
その場にいる者、全員がそれを察した。
すると、一歩離れて見ていた家康王子は頷き……
秀吉王子の側に仕える三成に声を掛けた。
「三成、国中に御触れを出して。王子が靴の履ける娘を探していると、履けた娘を妃にするって」
「かしこまりました!」
「家康……」
「乗り掛かった船ですから、とことん付き合いますよ。諦める気ないんでしょ、秀吉さん?」
その言葉には優しさが滲んでいた。
それを聞いて、政宗王子も『よし、やるか!』と、笑みを零した。