第10章 【童話パロディ】シンデレラ《後編》/ 豊臣秀吉
「姫……顔をよく見せてくれないか」
すると、秀吉王子が美依の細い腰を自分に引き寄せ、指で顎を掬った。
美依の零れんばかりの瞳が、月の光できらきらと光って……
その澄んだ瞳に、思わず吸い込まれそうになってしまう。
「綺麗な瞳だな、星が輝いてるみたいだ」
「あ……」
瞼に優しく唇を押し当てられ、美依は息を飲む。
唇は熱を帯びていて、ほんのり湿っていて。
その優しい温もりに、美依は思わず瞳を潤ませた。
「王子、様……」
「……っ、本当に可愛いな、姫は」
秀吉王子は、ぐらりと揺れる理性をなんとか保ちながら、美依の鼻や頬に、優しく唇を押し当てていく。
美依はその淡い温もりに肌を震わせ……
口から、くぐもった吐息を漏らした。
「────姫」
「あっ……」
頬から滑った唇が首筋を通り、かぷりと肌を噛んだ。
美依はその刺激に、びくっ!と身体を震わせる。
愛しい者を愛おしむのような、その王子の行動に、美依は泣きそうになりながらも、それを堪えた。
「王子、さまっ……」
「なぁ、姫。俺は自惚れてもいいのか……?」
「え……?」
「姫も俺を想ってるって。馬鹿みたいな話かもしれないが…俺は、姫のこと……」
そこまで言って、秀吉王子は首筋から顔を上げた。
いつしかその榛(はしばみ)色の瞳は熱を孕み、視線が絡めばまるで囚われそうなくらい、強い光を宿している。
美依が何も言えずに、その瞳を見つめていると。
ゆっくり、ゆっくり、唇が近づいてきて。
お互いの吐息が混ざってしまいそうな、そんな距離まで。
────キス、される
そう確信した美依。
そして、その唇が自分の唇に触れてしまったら…
もう、この腕からは逃れられない。
きっと、魔法が溶けても……
そう確信した、刹那だった。
ゴォーン…ゴォーン、ゴォーン……