第10章 【童話パロディ】シンデレラ《後編》/ 豊臣秀吉
────目覚めたか?
俺の腕の中で寝てしまうとは…貴様、いい度胸だ。
せっかくなら、このまま『シンデレラ』の続きを読んでやろう。
貴様は微睡みながら、俺の話を聞くが良い。
では、シンデレラ後編…始めるぞ。
《貴女を片腕に抱きながら、本を開く信長》
『姫、俺と踊ってくれないか?』
『……はい』
こうして、ひと目で運命の相手に恋した、秀吉王子。
美依の小さな手を取り、ダンスを踊り始めた。
ダンスなど、やったことが無い美依。
それでも王子にリードされ、可憐に足を運ばせて……
ダンスの合間に見上げれば、優しい秀吉王子の眼差しが降ってくる。
愛しさが絡み合い、見つめ合って踊る二人を見ながら、政宗王子と家康王子は安心したように息をついた。
「なんだ、上手くまとまりそうじゃねぇか、この感じなら」
「そうみたいですね、良かった。ただ……」
「ただ…なんだ?」
「選ばれなかった町娘達は、こちらで相手しなきゃならないって事ですよ」
「だろうな、この分だと」
政宗王子と家康王子は、顔を見合わせ苦笑し、町娘達の相手をするために戻っていった。
ホールの隅で、秀吉王子と美依を見守っている三成。
三成も安心したように笑みを浮かべながら……
懐中時計へ、目を落とした。
「もう、こんな時間ですか。あと30分で日を跨いでしまいますね…楽しい時間はあっという間だなぁ」
その後、秀吉王子と美依は、少し離れたバルコニーへとやってきた。
興奮して、顔を赤らめる美依。
そんな美依の姿を可愛いなぁと思いながら…秀吉王子は問いかける。
「姫は、どこの娘なんだ?どこかの貴族か」
「え、えぇと……」
「こんなに可愛い姫、初めて出会った。どうしてもっと早く出会えなかったのか…そうすれば、こんな舞踏会開かなかったのに」
「……っ」
美依は何も答えられず、押し黙って俯いた。
だって答えようがない、今は魔法で姿は変わっているだけだ。
本来の自分は、ぼろ服を着て、こき使われる身。
故に、名乗ることも出来ない。
そう思い、美依は俯くしかなかった。