第9章 【童話パロディ】シンデレラ《前編》/ 豊臣秀吉
「────美依、目を開けてごらん」
魔法使い光秀に言われ、美依はゆっくり目を開いた。
そして、自分の姿を見て驚く。
美依の粗末な服は、光り輝くオパール・グリーンのドレスに変わっていた。
宝石が各所に散りばめられ、それはまるで凍てつく冬を越えた春のような煌めき。
そして足元は──……
華奢で世界一美しい硝子の靴に変わっていた。
「素敵、素敵……!」
「これで舞踏会に行けるな、美依」
「はい、本当にありがとうございます、光秀さん!」
美依は、涙ながらに頭を下げた。
すると、魔法使い光秀は優しく微笑み指で涙を拭って、美依に諭すように言った。
「ただし、美依。本当にいい子なら、一つ約束を守れ。この魔法は12時までだ。12時を過ぎたら魔法は消え…お前は元のみすぼらしい姿に戻ってしまう。だから、12時を過ぎる前に城を出るんだ。解ったな、必ず守るんだぞ?」
────こうして、魔法使い光秀と約束をし
美依はカボチャの馬車に乗り、舞踏会へ向かった。
この時は、まだ一時の夢だと思っていたのに。
美依の運命を、大きく変える一夜になる。
そんな事とは、露知らず──……
美依はまだ夢見がちに、カボチャの馬車の中で、舞踏会に思いを馳せていたのだった。
*****
美依が馬車で向かっている頃。
城では、舞踏会がそれはそれは華やかに執り行われていた。
娘達は自分を綺麗に着飾り、また隣国の王子達も集まっていることから、そちらの王子達にも目を掛けてもらおうと必死である。
城のホールには絶え間なく音楽が流れ、ダンスなども行われている中……
秀吉王子は、一人機嫌悪そうにため息をついていた。
「秀吉、随分機嫌悪そうだな?」
「……誰のせいだと思ってるんだ、政宗」
「お前も娘達と踊ってこい、そんな仏頂面して……まだ誰も相手にしてないんだろ」
娘達とのダンスが終わり、政宗王子は秀吉王子に話しかけた。
すると、家康王子も娘達とのダンスが終わったようで、二人に近づくと、げんなりした様子でため息をついた。