第9章 【童話パロディ】シンデレラ《前編》/ 豊臣秀吉
「俺は魔法使いの光秀だ。美依、お前も舞踏会に行きたいだろう?」
「え、行きたいですが……」
「ならば、俺が叶えてやろう」
「本当ですか?!」
「ああ、良い子にはご褒美だ」
そう言って、魔法使い光秀は部屋中に目配せし。
やがて『ある物』に目を止め、指差した。
「机にあるカボチャを外に運べ、それから部屋の隅から見え隠れしているねずみも数匹、外に連れてこい」
美依は言われた通り、カボチャとねずみ数匹を外に運び出した。
外は、もう夜。
蜂蜜色をした満月が、煌々と月明かりを照らしている。
魔法使い光秀は並んだカボチャとねずみを見つめ、不敵な笑みを浮かべると……
すっと、指をカボチャの方に差し出した。
すると、どうだろう。
指からきらきらと光が放たれ、光を浴びたカボチャは豪華な馬車に変身したではないか。
「わぁ……!」
「馬車だけでは走らんな、走らせる馬と御者も必要だ」
そう言って、今度はねずみを指差す。
すると、またきらきらとした光が指先から放たれ、その光を纏ったねずみを達はたちまち大きくなり……
馬車を走らせる馬と、御者に変身した。
美依はびっくりして、声も出ない。
これは、魔法使いが掛けた魔法なのか。
「馬車に馬に御者に…これに乗って城まで行くといい。後、最後はお前だ、美依」
「あ……」
「馬車の前に立って、目を瞑るんだ」
素直な美依は、魔法使い光秀の言う通りに、馬車の前に立って目を瞑った。
すると、ふうっと息が間近で聞こえ。
耳元で、直接低い声が囁かれる。
「己が導くままに、曝け出せ。本当のお前の姿を、運命の相手とめぐり逢い、お前の行く末に幸あらんことを」
すると、足元から淡い光を帯び……
美依は穏やかな光に包まれた。
「信じていれば、夢は必ず叶う。誰しも真の愛に出会う資格がある。今この心優しき娘に、奇跡と幸福の訪れを──……!」