第9章 【童話パロディ】シンデレラ《前編》/ 豊臣秀吉
「秀吉さん、政宗さんは一度言ったら聞かないから無駄ですよ」
「それに、国中に知らせを出したので、すでに城下は大騒ぎになっています。素晴らしい舞踏会にいたしましょうね!」
家康王子の横で、三成もニコニコしながら悪びれなく言った。
そんな様子を見て『決まりだな』と政宗王子はニヤリと笑う。
秀吉王子は、ガックリうなだれるしかないのだった。
こうして、国中に知らせが届いた。
『城で娘達を集めて舞踏会を開く。集まった娘の中から、王子の妃を決める』と。
もちろん、継母や姉達、美依の耳にも入り。
継母や姉達は興奮しながら、準備に取り掛かった。
新しいドレスを仕立て、靴や着飾る装飾品……
美依はもちろん、その準備を手伝っていたが、美依自身も行きたくない訳が無い。
美依は勇気を振り絞り……
継母に、それを願い出た。
「お母様、私も舞踏会に行きたいです」
「そんなみすぼらしい格好で行く気かい、絶対駄目だ」
「私も行きたい、お願いします!」
「お前は留守番に決まってるだろう!」
舞踏会当日も、懸命に継母や姉達の支度を手伝った美依。
しかし、やはり連れて行ってもらえる訳がなく。
継母や姉達がお城に行くのを見送った後……
美依は独り、家で泣き崩れていた。
「私だって、王子様にお目通りしたい……」
美依には着飾るドレスもなければ、身に付ける宝石もない。
それでも諦め切れずに、泣いていると……
不意に、ドアが叩かれた音がした。
「ぐすっ、誰ですか……?」
美依は涙を拭い、立ち上がってドアを開けた。
すると、そこには先日助けたあの老婆が、白い装束を纏って立っていた。
「あなたは、あの時のおばあさん」
「あの時の礼をしにきた。あと…良い子にはご褒美を」
「ご褒美……?」
すると、老婆の姿があっという間に変わり……
背の高い、美青年の姿へと変貌した。
青年は白銀色の髪を携え、宝石のような黄金色の瞳で美依を見下ろしながら、前にもしたように美依の頭を優しく撫でる。