第9章 【童話パロディ】シンデレラ《前編》/ 豊臣秀吉
「あれ、消えちゃった…なんだったんだろう?」
不思議がる美依だったが……
洗濯物を干す途中だったのを思い出し、慌てて戻って行った。
そんな事をしている間に、美依は老婆のことは、頭からすっかり抜け落ちてしまったのだった。
──── 一方、その頃の王宮での話
その国には、王様とお后様と、一人の王子が居た。
名前は、秀吉。
秀吉王子は素晴らしい容姿の持ち主で、性格も優しく剣の達人で、町娘達から非常に人気があったが……
特定の女性を決めようとはせず、独り身だった。
そんな秀吉王子を見かねた、隣国の王子政宗が、ある『催し物』を勝手に開くと、国中に知らせを出した事から、話は始まる。
「政宗!勝手な事しやがって……!」
城の庭で、政宗王子に向かって声を荒らげる秀吉王子。
だが、政宗王子は気にしないと言った様子で……
紅茶に口をつけながら、口角を上げてみせた。
「秀吉、俺が淹れた紅茶が冷めるぞ、飲め」
「呑気に飲んでる場合か!勝手に舞踏会なんか開く知らせを出しやがって…しかも名目は王子の妃探しだと?!ふざけんな!」
「秀吉〜、俺はお前を思ってやったんだ。王にも許しは取ったぞ?」
カチャンとソーサにカップを置く政宗。
そして腕を組み、秀吉をじろりと若干睨みながら言う。
「お前、また見合いを断ったんだろ?そろそろ相手を決めないと、王も可哀想だ」
「俺はお前だけには言われたくないんだがな、政宗!」
「俺の話はどうでもいいんだよ、今は。とにかく、国中の娘達を集めて舞踏会を開けば、お前が気に入る娘が居るかもしれないだろ?」
「だからってな……!」
「運命の相手というやつを待つのはいいが、自分からも探せ。どこに運命が転がってるか解らねぇだろ」
政宗の言葉に、ぐっと言葉を詰まらせる秀吉。
そんな事をしていると、これまた隣国の王子家康と、秀吉の従者三成が揃って姿を現した。
遠目で二人のやり取りを聞いていた、家康王子と三成。
家康王子はため息をつきながら、秀吉王子に言う。