第9章 【童話パロディ】シンデレラ《前編》/ 豊臣秀吉
イケメン戦国、童話パロディの世界へよく来たな。
俺は今回の物語の語り手をやる、織田信長だ。
今回の『シンデレラ』は前回までの童話パロディとは違い、ギャグ要素が皆無であるため、面白い語り手は期待せぬように。
では……傍によれ。
金平糖でも食しながら、話を聞くが良い。
それでは、始めるぞ。
いざ行かん、御伽草子の世界へ──……
《信長の手の中にある本が開かれる》
むかしむかし、あるところに。
美依と言う、美しく心の優しい娘がいた。
早くに母を亡くした美依。
父は美依には母親が必要だと思い、二人の娘を連れた夫人と再婚するが……
父が亡くなると、継母となった夫人は正体を現し、美しい美依を妬んで、二人の娘と一緒に召使いとしていじめ、こき使うようになった。
そこから、この物語は始まる。
「早く洗濯物干して、掃除しなきゃ……!」
その日も美依は継母達にこき使われ、ぼろ服をその身に纏いながら、せっせと働いていた。
今は冬。
手をあかぎれにさせながらも、必死に洗濯をする美依。
そして、綺麗に洗った洗濯物を干していると……
少し離れた所に、誰かがうずくまっているのを見つけた。
「どうかしましたか、具合が悪いんですか?」
美依がうずくまっている、その者に声をかけると、その者はゆっくり顔を上げた。
それは、黄金の瞳をした老婆だった。
老婆は苦しそうに美依を見つめながら、骨張った手を差し出す。
「もう、三日も何も食べていない」
「それは大変……!ちょっと待っててくださいね!」
美依はびっくりして、急いで家からパンを持ってきて、老婆に渡した。
これは美依の、今日唯一の食事だったが、老婆を見捨ててはおけないと……
心の優しい美依は、それを差し出したのだ。
老婆はパンを食べ終わると、ゆっくり立ち上がり、美依の頭を優しく撫でながら言った。
「お前は心の優しい、いい子だ。その心の美しさ、しかと見届けたぞ」
すると、老婆の姿はふっと消えてしまい…
美依が一人、ぽつんと取り残されたのだった。