第8章 【Twitter企画】淡紅姫-泡沫に燃ゆる-/ 豊臣秀吉
────その時、ふわりと夜風が肌を撫でた
今がまだ夜明け前だったという事に、今更になって気がつく。
どおりで、美依があまり良く見えない訳だ。
なんか、やたらぼやけて、目頭が熱い──……
「秀吉、さん……」
その時、ようやく美依が身体をよじって、こちらを向いた。
そして向かい合って、俺を見て……
目を優しく細め指でつーっと瞼を撫でる。
「……泣いてる秀吉さんなんて、初めて見た」
「え……」
「こんな秀吉さんも居たんだね、昨日から私…知らない秀吉さんばかり見てる」
そう言われ、瞳に涙の膜が張っていた事に、今気がついた。
泣くなんて格好悪い、そう思い零れないように堪える。
すると、美依は俺の頬に両手を添え、真っ直ぐ俺を見つめた。
「私ね、秀吉さんの事を考えていたよ、お菓子を食べて身体が変になった時……」
「え……?」
「熱くて、身体が疼いて、もう堪らなくて自分でやり始めて…その時、自分の手を、秀吉さんの手だって思い込んでた。秀吉さんにされてるって……自分じゃ物足りなかったから」
「……っっ」
美依が恥ずかしそうに頬を染め……
でも、視線は逸らさないで、その言葉を紡ぐ。
俺にされてるって思い込んでたって。
自慰する時に頭に思い描くなんて、それじゃまるで。
美依は──……
「私…秀吉さんのこと、すきだよ」
「美依……」
「兄なんて思ってない。ずっと見てた、秀吉さんだけを、ずっとずっと見てたよ」
そして、可憐に笑った美依は、
今まで見た事ないくらい、眩く鮮やかだった。
「秀吉さんのこと、だいすき──……」
(………っっ)
手を伸ばせば、すぐそこにあった
愛しい人、優しいぬくもり
想い合える悦びも、何もかも──……
全てを晒した事は、無駄ではなかった
俺の築き上げた堤防は崩れ去り
流れ込んできたのは、確かな愛
素直な本音と、可愛らしい真実と
満たされていく……充実感
────……ああ、幸せだ