第8章 【Twitter企画】淡紅姫-泡沫に燃ゆる-/ 豊臣秀吉
「熱いの、秀吉さん…私、おかしくなっちゃう……」
「美依……」
「お願い、助けてぇ…秀吉さん、助けて……!」
「……っっ」
その必死な顔と声。
美依が俺に、助けを求めている。
身体の疼きを癒してくれと。
渇いたものを満たしてくれと。
それはすなわち…美依と交わるという意味だ。
(美依、俺はっ……)
かろうじて理性が働き、思いとどまる。
それは、俺にとっては願ってもない事だった。
美依が好きで、美依を求めて自慰を繰り返していた俺。
だから、この好機は絶対逃がしてはいけないと。
そんな自分よがりな考えが、頭を支配する。
────だが、そこに『気持ち』はない
ただ、美依の渇きを満たすためだけの行為。
俺がいくら好きでも…美依の気持ちは解らないから。
癒してくれるなら、誰でもいいのかもしれない。
そう、俺じゃなくても。
そんな行為に、意味があるのか?
二つの感情が、せめぎ合う。
理性と欲望、重視しなければいけないのはなんだ?
「んっ……!」
その時、突然美依が俺の首にしがみつき、唇を重ねてきた。
熱い舌が、ぬるっと口内に入ってきて……
見る間に絡め取られてしまい、呼吸を失う。
「はぁっ…んっ、んぅ……」
「はっ…んっんんっ…ぁ……」
まるで貪るように合わさる唇は、吐息までも飲み込み、思考までも奪っていく。
霞みがかった脳内はぼんやりし、それこそ変な薬でも飲んだみたいに、何も考えられなくなって……
そんな口づけを繰り返し、やっと離れると、唇の間にはつーっといやらしく糸が伝った。
呆然とする俺に、美依が言う。
心の叫びを、今の願いを。
「秀吉さん、助けてぇ……」
その声は悲痛で……
熱を孕んだ瞳が、不安そうに揺れていた。
(……ああ、そうか)
そこで、ようやく俺は理解した。
俺は、何自分勝手な事ばかり考えていたのだろう。
俺の理性でも、俺の欲望でもない。
一番大切にしなきゃいけないのは、そこじゃない。
一番大切にするもの、それは
────美依の、今の気持ちだ