第8章 【Twitter企画】淡紅姫-泡沫に燃ゆる-/ 豊臣秀吉
「……だれ?!」
しまったと思った時は、もう遅い。
美依はガバッと起き上がり、こちらを睨んだ。
駄目だ、これはもう隠せない。
そう思った俺は気まずそうに襖をゆっくり開いた。
すると、俺の姿を確認した美依は、こぼれんばかりに目を見開き……
瞬きもせず、ぽつりと言葉を漏らした。
「秀吉、さん……!」
「その、お前に柿を食わせてやろうかと思って、そしたら、なんだ、ほら……」
「……っ」
「…悪い、見るつもりはなかったんだが、つい…」
我ながら、かっこ悪い言い訳していると思う。
つい…ではないだろう、あんなに凝視して。
……駄目だ、非常に気まずい
なんとか空気を変えないと…そう思った俺は、自分でも馬鹿だと思うくらい明るい声を出した。
「なんだ、ほらっ…お前だってそーゆー時あるだろ?大人の女なんだから…別に恥じる事はないからな!悪かったな、居合わせちまって。もう、この話は終わり、終わりだ。ほら、着物を直して柿を食うぞ、きっと美味いから」
一人で勝手にまくし立てる。
そうでもしなければ、先ほどの美依の艶っぽい姿が、脳裏に思い出されてしまって駄目だった。
そして、それを見て、昂ってしまったなんて……
そんな格好悪い姿、見せられないだろう?
美依は唇を一文字に結び、俺を見上げている。
はだけた胸元からは、白い肌が覗いて……
艶めかしく伸びた素足も、まだそのままだ。
(頼む、これ以上は、本当にっ……)
見上げてくる視線が痛い。
頼むからこれ以上は俺を刺激しないでくれ。
そんな事を思い、唇を噛んで視線を逸らした時。
美依が、まるで懇願するように……
泣きそうな声で、言葉を紡いできた。
「秀吉さん、助けてぇ……!」
(え……?)
その言葉に、思わず目を見開く。
もう一度美依を見てみれば、美依は瞳を潤ませ、真っ赤な顔で…
微かに熱い吐息を漏らしながら、自分の身体を自分の腕で、ぎゅっと抱き締めていた。
小刻みに身体を震わせ、汗ばんで。
なんだ…なんか少し、おかしい?
そんな風に思っていると、美依が時折言葉を詰まらせながら、やっとと言ったように声を発した。