第7章 〖誕生記念〗溺れる微熱に、口づけの花束を / 石田三成
「三成君、好きになってくれてありがとう」
「んっ……」
今度は胸元。
鎖骨から、順々に噛むように……
ちゅっちゅっと音を立てて、唇で啄まれる。
これでは、情事の時に全身愛撫されるのと、何ら変わりはない。
だって、既に上半身からは着物が滑り落ち、長着は乱されてしまっているのだから。
ならば……私だけではなく、美依様も。
そんな浅ましい感情の合間にも、私はある事に気が付き、胸元の美依様の頭を撫でながら、それを問いかけた。
「美依様……」
「ん……?」
「唇には、してくださらないのですか?」
すると、美依様はゆっくり顔を上げる。
その顔は林檎のように真っ赤で……
ああ、口づけている本人も照れているのだなと。
それが解って、思わず口元が綻ぶ。
「唇は、これから。一番最後だよ」
「……そうなのですか?」
「うん、一番大事だから」
すると、美依様は私の胡座の上に横座りになり、首元に腕を巻き付けてきた。
そして、改めて真正面で向き合う。
その瞳はどこか煽情的に濡れて、艷めく唇も誘うように真っ赤で。
湯上りの湿った温もりが、美依様の襦袢越しに伝わってきた。
「三成君、あのね」
「はい」
「私……」
────そして、紡がれる言ノ葉は
私の理性を、脆くも木っ端微塵に打ち砕いたのだ
「本当に愛してる。誰よりも、何よりも…三成君だけを、心の底から愛してるよ。だから、私をもっと…貴方のものに、して」
(────…………っっ)
そして、唇同士が触れ合う
美依様から初めて重ねられた唇は……
甘く蕩けて、ほんのり紅の味がした
思考回路が破壊されるくらいに
その言葉が、脳内に響き渡って
移った温もりも、混ざり合う吐息も
高ぶった神経を刺激して、全て崩れる
(ああ、また貴女に困らされたようだ)
貴女に溺れた、その日から
私は貴女の行動に一喜一憂して
どれだけ振り回されているか
貴女はそれも知らずに
無邪気に私への愛を囁く
ならば──……
言葉をそのままそっくり受け取って
貴女を私のものにして、いいですか───………?