第7章 〖誕生記念〗溺れる微熱に、口づけの花束を / 石田三成
「た、たくさんの口づけとは、い、一体……」
説明を促す言葉ですら、緊張でどもる。
しっかりしろ、私。
心の中で、自分を叱咤する自分が居た。
すると、美依様は恥ずかしそうに俯きながらも、チラチラと私を見て……
その意味を、一生懸命説明してくれた。
「あのね、私のいた時代では…口づけは愛情って意味なの」
「愛情……」
「でも、私からしたことないから…三成君を愛してるよって改めて伝えるのに、たくさんの口づけを贈りたいなって」
「……っ」
「だめ…かな?」
(上目遣いでそれを聞くのは反則でしょう……!)
美依様が目の前で、瞳を潤ませながら私に問う。
そんな目で見られたら、駄目ですとは言えない。
むしろ駄目なんて答えはない、美依様から口づけられるなんて、この上ない幸せだ。
(なら、照れていないで、精一杯受け取りましょう)
私はふぅっとひと呼吸吐くと……
浮つく気持ちを抑え、いつも通りに笑みを浮かべて美依様に答えた。
「貴女からの贈り物、喜んで受け取ります」
「本当に?」
「はい、私は座ったままで宜しいですか?」
「うん、座ったままでいいよ」
すると、美依様は膝立ちになって、私の傍に寄り。
私の肩に両手を置いて、少しだけ力を入れた。
この状態だと、美依様の方が頭の位置がほんのちょっと高い。
美依様は私を若干見下ろしながら……
緊張しているような、そんな声色で言った。
「じゃあ、始めるね」
「はい、宜しくお願いします」
「うんっ……」
美依様と視線が合い、絡み合う。
それは優しく、淡い期待を帯びているかのような瞳に見えて。
もしかしたら、私も同じ目をしてるのではないかと。
そんな風に思えて、その黒真珠の瞳を熱っぽく見つめ返した。
そのまま美依様は、指で優しく私の前髪を掻き分け……
「三成君、お誕生日おめでとう」
ちゅっ…と額に唇を押し当てた。
ふわり、と温もりが落ちてきて……
(……っっ)
その一瞬だけで、身体が一気に熱を帯びた。