第1章 1
あたしは本当に人間なんだろうか、いつも思っている。
周りにいる人間はいつでも輝くものを探し続けるうつくしいひとたち、いつでも色彩を身にまとい陽の光を浴びることで成長していくもの。
そのなかにあって気持ち悪く異質なあたしを受け入れることすら自然と行ってしまうすばらしいひとびと。
その中で、うつくしく輝く人々の中で、あたしは一人薄暗がりに沈んで何もかもを拒絶している。
本当は欲しいのに。自分もそうなりたいのに。
輝きに魅せられ輝きをまとい輝きに包まれることを何よりも強く望みながら、馬鹿で天邪鬼なあたしは掛け布と木の枠でできた柔らかい殻に毎晩潜り込む。
世界中のうつくしいものから目を背けられるようにしたその殻の中で、あたしは今夜も恋をいらいらと否定し愛をこそこそと嘲笑いそして眠りにつくのだ。
手に入らないから恐れ、手に入らないから馬鹿にするのだと思う。
誰も手出しできない殻の中、あたしはただ一人不満を撒き散らし続ける。
そんなことを考えていた、いや、考えていたというより沈んでいたんだろう。いつの間にか自分の手元に落ちていた視線を元に戻す。
見ていたはずのひとが見当たらない。
「ねー鳳ィ」
「あれっ跡部先輩、どうしたんですか」
「毎日毎日コソコソ何やってんだ吉村、アーン?」
掛け合った声は、見事に三角形を描いた。
* * *
あたしはひかりがこわいの。
あなたがたとえあたしのこころをみぬいていたとしても。
あたしはばかで、あまのじゃくな、くらがりにかくれるよわむし。
あなたがたとえあたしのこころをみぬいていたとしても。
すきだなんて。
いえるはず。
ない。
* * *