第1章 1
「言い逃げか?」
「そうかもね」
「……いいか、おまえはいつでもずっと俺様の美技を見て、俺様の動きを称えてりゃいいんだ。無駄な言葉なんか吐いてんじゃねえ」
「……それってプロポーズみたいよ」
「どこがだ」
「いつでもずっとって」
「……ならそれでもいい」
「なんかいつになくぶっきらぼう。ムードないなぁ」
「黙ってろ」
「運命って信じる?」
最後に付け加えるような、あたしの質問は無視された。だってこいつ、そっぽ向くんだもの。
* * *
抜け出したのは箱庭じゃなくて、柔らかいあたしの殻。
箱庭の中のあたしは、今日も箱庭の中のうつくしいひとを見つめて、日々を過ごしてる。
何も変わらない世界。
隣にいるひとが変わっても、あたしがどんなに変わっても、この美しい世界には何一つ変化なんかなくて、でもそれでいい。
あたしは今日も、あの窓辺から彼を見る。