第5章 ジョウカヘ
(これだ!)
「あの!──」
「いい、俺だけで十分」
「…私まだ何も言ってないです…」
「手伝わせろとでも言うんでしょ?結構」
清香の展開予想図は呆気なく崩れた
それでも、立ち去ろうとする家康の袖を掴んだ
「いいから、私も持ちますっ!」
そう言って、持っていた瓶を懐に仕舞い、家康の持っていた書物を数冊持った
「ちょっと、ほんとに要らないんだけど!」
「私には必要です!ほら、私は持っちゃいました!書庫に案内してください」
清香は意地を張り、家康の隣に並んだ
「はぁ…分かった。着いてきて」
家康は諦めたようにため息をつくと、書庫へと歩いていった
「ここ」
「おぉー…」
扉を開き、書物を一瞥して棚に積み上げた
「どこに置けばいいですか?」
家康が持っていた書物を全て、棚に置いたことを確認すると、清香の持っていた書物に目を落とした
「それは全部薬学のだからこっち」
「了解です!」
棚に1冊ずつ戻していき、家康に向き直った
「家康さんって、勉強熱心ですね」
「まぁ、読書は好きだしね」
(私はまだ読み書き出来ないんだよね…)
棚に戻した書物を開いた
「私、読めないからなぁ…」
「だったら、俺が教えてあげようか?」
家康は書物を立ち読みしながら清香に言った
「え?どうして…」
「この前、酷いこと言っちゃったし…」
『弱い奴』
「あぁ、別にもういーですって」