第5章 ジョウカヘ
そんなことは知らず、清香は店を見て周り、装飾を売る小さな店に着いた
「それは昨日仕入れた耳飾りだぜ、安住清香」
「え?なんで私の名前を…あ!あなた…」
店番をしていたのは、本能寺が燃え上がった夜、崖から落ちそうになっていた、清香を助けた幸村だった
「よう、イノシシ女」
「ちょっ…何よそれ!私は猫派よ!」
「そこかよ!」
「えっと貴方は…雪町だっけ?」
「ちげーよ!幸村だ馬鹿!お前わざとだろ!」
「仕返しよ!ざまぁ見なさい!」
べっと舌を出し悪戯っぽく笑ってみせた
「やぁ、こんにちは清香さん」
幸村の後ろから、ひょこっと佐助が現れた
「佐助くん!やほー!」
幸村を挟んで右手を振ってみせた
「お前は安土の人間だが、佐助の知り合いらしいからな。特別だ」
「嫌ってほど上から目線ねー…」
腕を組み、上から見下す幸村を下から睨んでやった
「ほら、やるよ」
「え?でも私、お金ないよ?」
そう言い、清香が見ていた耳飾りを清香の前に出した
「さっき悪く言った詫びだっつーの!いーから受け取れ」
「でも…」
「清香さん、幸村はあまり素直じゃないんだ。分かりづらいと思うけど、幸村なりの優しさだから受け取って欲しい」
こそっと清香の耳元で呟いたのは横にいた佐助だった
「佐助!余計な事言ったか?」
「別に」
くいっと人差し指で眼鏡を押し上げ誤魔化した
「じゃあ、お言葉に甘えて…ありがとう、幸村!」