第3章 アヅチジョウヘ
「俺の事は政宗って呼べ。敬語もナシだ」
「でも、呼び捨てはちょっと…」
「堅苦しいのは嫌いなんだ。いーから言ってみろ。政宗」
(そこまで言われたら何も言えないし…)
「ま、政宗…」
「ん…それでいい」
(心臓が…)
「それじゃ、始めるか」
10分後…
「おい、何がどーなったらこんなことになるんだ」
「えっと…私は野菜を切っただけ…だよ?…」
清香に切られた野菜はとにかく原型を保てていなかった
人参の大きさはバラバラ
かぼちゃは固く、深緑色の皮が最後まで切られていない状態
「だから言ったでしょ?!私は絶望的な料理音痴なの!」
「そもそも、なんだ?その包丁の持ち方は?」
清香の手に握られた包丁の刃はまな板に向けている─
わけでなく、何故か下へと向けられている
つまり、野菜を切る持ち方でなく何かを突き刺すような持ち方だ
「よくそれで切れたもんだな」
「うぅ…」
「いいか?こーやって…」
政宗は後ろから回り、清香の身体を覆いかぶさるようにしてくっついた
右手を清香の手に重ね、包丁を手に握らせた
「な、なるほど…」
「左手はちゃんと指を丸めて野菜を抑えるんだ。で、切る…」
落ち着いて、淡々と野菜を切る清香
「(こいつ、こんだけ至近距離なのに騒がねーんだな。前は表情コロコロ変えてたくせに)」
「できた!」
「なんとか終わったな」
政宗の指導のお陰で、なんとか完成した