第3章 アヅチジョウヘ
清香に背を向け、手を動かしながら中に入るよう指示した
清香は政宗の横へと移動し、政宗の手さばきをじっと見た
「政宗さんって料理出来るんですか?」
「まぁ、好きでやってるし、どちらかというとできる部類なんじゃないか」
「すごいですね…」
呆気に取られてしまった清香
「あ、それで私に何かご用ですか?」
「忘れてたな…お前、世話係なんだろ?今夕餉を作ってる途中なんだ。せっかくだから手伝ってもらおうと思ってな」
「え?!私、料理なんて出来ないですよ!!」
「出来ないと言っても仕事の1つだしな〜」
そう言い、持っていた包丁を置き、清香の顔を覗き込み、ニヤリと不敵に笑った
「ちょっ!政宗さん?!」
いつの間にか、手を肩に置き、背中の方にもう一方の手を回した
「な!何を?!」
政宗の顔が清香の耳を掠め、ギュッと目を瞑った時
「お前、たすき掛けが緩んでんぞ」
「……え」
制服の上に着ていた羽織には白い布でたすき掛けをしていたのだ
秀吉に渡され、見よう見まねでやってしまったため、緩んでいたらしい
「そ、そーゆー事か…」
自分の思っていた展開と全く違ったため馬鹿らしくなってしまった
「なんだ、何かされると思ってたのか?」
嫌味に口角を釣り上げ、結び直した清香を見つめた
「お、お思ってませんよ!何のことか分かりませんがー…」
目を泳がせ、意地を張る
「政宗」
「え?」