第3章 アヅチジョウヘ
(いくら安土城で強い武将さんたちといるからって、身の安全が完全に保証された訳じゃない)
「うーん…」
考え込みか身体への疲労もあり、清香は女中に敷いてもらった褥の上に仰向けになってしまった
ガタッ
「っ?!」
いきなり天井から物音がして上体を起こし、体を強ばらせた
(誰?!もしや、暗殺者?!)
「こんにちは」
「え?!誰?!だれだれ?!?!」
天井から黒縁メガネをかけた忍者が顔を出した
上から登場というありえない事にとにかく慌てる清香
しゅたっと、華麗に天井から降りる忍
なんとも無駄のない動きに見入ってしまった
「俺は猿飛佐助。君と同じ現代人だ」
「え?500年後から来たの?私と同じで?」
「そういうことだ」
「…そっかぁー…」
(私だけじゃなかったんだ…)
安堵した心をなだめるように、佐助に向き合う清香
「君は?」
口元を覆っていた布を下げた
「安住清香です。18歳の高校生です」
「俺は京都でタイムスリップの研究をしている大学生だ。気にせずタメ語で構わない」
にっこり紬に微笑む佐助
固く絡まっていた緊張は解けていった
「うん!それで、元の時代に帰れる手立てはあるの?」
「今の時点では何とも言えない…だから清香さんは出来るだけ強い武将に守ってもらえれば有難い。だからここに居るのは安全だ」
「分かった」
「うん。できる限りはここに来るようにするから」
「でも、警備とか厳しくないの?いくら忍者とはいえ」
「大丈夫、4年は忍者してるから」