第3章 アヅチジョウヘ
「信長様!一体何を仰っているのですか?!こんな素性も分からない娘を傍に置くというのですか?!」
「なんだ秀吉、素性ならたった今分かっただろ」
秀吉は目を見開いたまま、清香を2度見した
「この娘の言ったことを鵜呑みにすると言うのですか?!」
「だったら何だ?俺はこいつを気に入ってるんだ」
「ちょっと待って!話が突飛すぎてついていけないです!それに、私の意見は無視ですか?!」
信長の腕を解き距離をとった清香
「おい、貴様!信長様に何するんだ!」
今にも刀に手をかけそうな秀吉は鬼の形相で清香を睨んだ
「だって、いきなり有り得ないでしょ?!お気に入りだとかそばに置くとか幸運を運べだとか!私は帰らないと!!」
「では聞くが、未来から来たお前は帰る場所があるのか?」
「そ、それは…」
何も言えない
右も左も分からない清香に現時点で帰る場所など持ち合わせていない
例え遠い親戚がいたとしても、私はあなたの遠い子孫ですなどとうつつを抜かしても、追い返されるのが目に見えている
口ごもり、視線を下に落とした清香を見て信長は言う
「お前は織田家ゆかりの姫として扱ってやる」
「姫って…」
(でも、良く考えれば悪くない話だ…戦国時代なんて、少しでも何かあれば死んでもおかしくない…だったら)
「分かりました。けど、何もしないでぐーたらすんのは嫌なんで、お世話係として、置いてください」
信長に向き直り、頭を下げた
「いいだろう」
「ありがとうございます!」