第3章 アヅチジョウヘ
「500年後?お前、信長様の御前で何を言ってんだ?」
緑の和服のタレ目の男が眉を寄せ、怪訝な顔で清香を見た
「本当なんです!というか、こんな所で嘘つくほど私は馬鹿じゃないです!!」
思わず大声を上げてしまったことに清香は今更ながら気づいた
(しまったー!思わず…)
「なら、500年後から来たという証拠はあるのか?」
信長は笑みを崩さぬまま優雅に言った
「証拠?…あ!私の鞄がここにあるはずてす!中を見れば納得されると思いますよ!」
信長は家臣から紬の鞄を持ってこさせ、清香の目の前に置いた
すかさず鞄の中を物色し、中から携帯、ペンケース、参考書(何故に)、財布、ノート…とあるものを出し始めた
信長や武将たちは初めて見るものの数々に目を丸くしていた
「1番はやっぱりこれかな…えっと、これは携帯電話といって、遠くにいる人と会話出来たり、手紙も簡単に相手に送ることが出来たりします!物によっては調べる機能もついていたりするんです」
「ほう、確かに今の技術出は到底不可能な便利品だな」
信長は納得したように頷いた
「でしょ?!じゃあ信じて頂けましたか?」
胸の前で両手を組ませ、光を含ませた瞳で信長を見上げた
「あぁ、実に面白い」
「えっ?!」
信長は上座から降り、清香の目の前で膝をつき右手で顎を掴みあげ、左手を腰に回しグッと距離を縮めた
「決めた。お前を俺のそばに置き、俺に幸運を運べ」
「うえっ?!」