第1章 暗闇の中でも
「ん、あっ、晋、ん、助」
涙で視界が滲む。
それでも、眼を閉じる気にはなれない。
今夜の月も、晋助の顔も、見れるだけ見ておきたい。
次に見れるのがいつか、そもそも見れるのか、約束なんてどこにも無いのだから。
私は晋助の背中に腕を回し、爪を立てた。
世界を憎むあなたの心には、私の姿を写す事は出来ないかもしれないけれど、残させて、せめてあなたの体には、私の存在を。
律動が早まり、晋助の息が荒くなる。
突き上げられる感覚に、思考が支配される。
「晋、助…も、無理」
「はっ、俺も…もうイキそうだ」
私は急いで涙を拭い、晋助の顔を見つめた。
揺れる紫色の髪、緑を含んだ右目、包帯で隠された左目、熱い唇…。
全部、今夜だけは私のモノだ。
「…イクぞ」
「ん、私、も」
ビクッという動きから一拍遅れて、私の中にドクドクと熱が放たれた。
すべて見届けた私の顔を、月の光が撫でた。