第1章 暗闇の中でも
晋助は再度、満足そうに微笑む。
その顔が俄に見えなくなった。
先ほどまで雲ひとつない夜空に浮かんでいた月が、分厚い雲にその姿を隠していた。
「真っ暗…」
思わず呟いたら、そっと髪を撫でられた。
「問題ねぇよ」
「え?」
「暗くても、俺は別に困らねぇ」
言葉の意味を考えていたら、耳に舌が触れた。
「ひゃっ…」
「ここが耳だ」
「ちょっ、晋…」
「ここは目…ここは鼻で、ここが口だ」
唇を開けて入って来た舌が、歯列をなぞり、私の舌に絡み付いてから離れた。
「な、んで」
「あ?」
「なんで、分かる、の?」
真っ暗で、私には晋助の表情もよく見えないのに。こんなのは、ズルい。
「さぁな」
適当な返事を返された後、首筋を舌が這う。
「ここが首、鎖骨…胸」
胸の頂は舌で転がされる。
「あ、あぁ、ん、あ」
見えないのに快楽だけが確かで、私はまたイキそうになる。
晋助は気づいていないのか、承知の上で面白がっているのか、舌は既に太ももに到達している。
「ここが太ももだ。さっき、俺が付けた痕がある」
何故、この闇の中できちんと同じ箇所を吸えるのだろう。
「も、もう、や…」
私の小さな悲鳴は聞こえているはずなのに、舌は秘部を通り越し、足の指を舐め始めた。
「や、だめ、足、汚いよ」
慌てる私を無視して、舐めるどころか1本ずつしゃぶり始め、私は快楽と羞恥で息が出来ない。
「いっ…」
鼻緒が擦れた箇所に唾液が沁みた。
「」
「え?」
「駆け付けて来るのは嬉しいがな、怪我すんじゃねぇぞ」
「な、なんで分かるの」
「さぁなぁ。ま、お前の体は知り尽くしてるって事だ」
「…」
「そろそろ、またイキそうなんだろ?」
晋助が体を起こす気配がした。
「まぁ良い。俺も、我慢の限界だ」
その言葉を待っていたように、雲が途切れ、月明かりが部屋を満たした。
なんだか急に恥ずかしい。
手で顔を覆うと、即座にどかされた。
「何してんだ」
「だって、月に、見られてるみたいで」
「見せつけてやれ」
言うなり晋助は自身の着物を脱ぎ、ほとんど間を空けずにに私の中に突き立てた。
「んん~~」
「…くっ、絞め過ぎだ…動くぞ」
熱い律動、互いの口から漏れる息、滴る汗。
今私達のすべてを見ているのは、月だけだ。