第48章 嫌疑と再会
「そ、そんな…兵長…手を握り合うだなんていい方はなんだか語弊が…た、確かに兵長の仰る通りで、私はデイジーくらいしか話し相手はいませんでしたが、卒団が近くなった3月頃に、負傷したルドロフの処置を私がしたんです。その時から卒団までのわずかな期間、親しく…というか声をかけてもらっただけです…」
「お前が処置をしたって事は縫合処置だな?いったいどこの縫合をしたんだ…」
「えっと…右の太腿です。立体機動で森抜けの訓練をしていた時に木々にもまれて落下した際にブレードの刃が触れて大怪我を負っていて…出血も多くて迅速な処置が必要でした。」
「そうかよ…」
ルドロフの話ではその時、医師が不在にしていたと言っていた。と言う事はルドロフはクレアのおかげで九死に一生を得たのだろう。
「それじゃあアイツが最後に言ってた友達1号ってのはどういう意味なんだ。」
「そ…それは……」
別にルドロフとやましい事など何もない。
しかし、今のリヴァイに何を言っても火に油を注いでしまうだけだろう。
クレアはなんとか言葉を選ぼうと頭をフル回転させるが、リヴァイはそんなクレアに焦れて眉間にシワを寄せながらにじり寄ってきている。
この状況は非常にマズイ。
「“それは…”なんだよ…さっさと言えよ…」
三白眼の鋭い眼光が刺さる様に痛い…
「それはですね…卒業まであと少しだし、良かったら仲良くしようと言われただけです。私、人からそんな風に言ってもらえた事なかったので…友達ができたのは初めてだと…そう彼に言いました、なので…その事かと…」
「ほう…そうかよ……」
変わらず不機嫌な表情でクレアを見つめるリヴァイ。
分かっている。
これは嫉妬だと十分に分かっている。
ひと回り以上も年下の恋人に対してみっともない事だというのも十分に理解している。
でもリヴァイは許せなかった。
女相手は別としても、クレアの“初めて”は全て自分でなければ気が済まない。
それ故に友達であろうとなんだろうと男であるルドロフがクレアの“初めて”の称号を持っている事に、リヴァイは嫉妬する気持ちが止められなかった。