第48章 嫌疑と再会
「クレア…すまないが、君は審議所内で待機していてくれ。エレンの処遇が決まるまでは我々の監視下という事になってしまってるからね。しばらくはストヘス区の兵舎と審議所の往復になりそうだ。」
「あっ、私は大丈夫です…何もする事がないので、皆さんの馬の手入れをしたりしながら待っていますので…」
クレアが笑顔で答えると、エルヴィンも安心した様に爽やかな笑顔を向けた。
「では、また後で…」
しかし、クレアはある事を思い出すと、エルヴィンの腕を掴み引き止める。
「あっ、あの団長…これ、少しですが…食堂のパンです。ハンジさんが包んで下さったのを今皆さんで召し上がってたんです。団長も朝は、何も食べてなかったですよね?宜しければ、会議の前にどうぞ…」
白くて清潔そうなハンカチに包まれているパンを少し照れ臭そうに渡すクレアの頬は少し赤くなっていた。
自分のためにパンを残しておいたクレア。
そんな甲斐甲斐しい姿に思わず心臓がドクンと脈打ってしまったエルヴィン。
これは、自分を上官として気遣っただけであり他意はない。しかし、おずおずと差し出す健気なクレアに胸がざわついてしまうのはもう仕方がないだろう。
こんな姿を見せられて何も感じ無い男の方がおかしいのだ。
エルヴィンは、自分の反応を正当化させようとアレコレ考えを巡らせながらその包みを受け取った。
「ありがとうクレア。昼食は午後にずれ込みそうだからな。助かったよ。」
「あ、こちらこそ…ありがとうございます…」
すると、そんな2人のやり取りを面白くなさそうに見ていた人物が1人、会話に割り込んでくる。
「おいエルヴィン…そのハンカチは俺のだからな。ちゃんと返せよ…」
「あ〜、リヴァイ!ヤキモチ妬いてる?」
「うるせぇぞクソメガネ…とっとといくぞ…」
「あっ、あの!みなさん…お気をつけて!」
なんやかんやと騒がしくしながら調査兵団幹部御一行は会議室へと向かうため、部屋を出て行った。