第48章 嫌疑と再会
「壁内が混乱している中少し不謹慎かもしれないが、私達も壁外調査からずっと働き詰めだった。もちろん明日からも激務には変わりない。せっかく時間が取れたのだから少し休憩としよう。」
すると、皆でチンと軽くグラスを合わせた。
しかし、せっかくの休憩の時間となったのだが会話の話題は巨人化をしたというエレンの事ばかりだ。
「クレア、君はエレンとは幼少期に面識があった様だが、どんな少年だったんだい?」
「えと…普通の男の子だった記憶しかありません。イェーガー先生が家にいらした時に、絵本を読んであげたり、簡単な勉強を教えた事くらいしか…それと、イェーガー先生に、お子さんはエレンだけですよね?なんだか、彼と同じくらいの女の子が一緒にいたような朧気な記憶もあるのですが…」
「ん??…その“女の子”というのはミカサ・アッカーマンの事では?」
「え?!」
クレアはエルヴィンの口から出てきた“ミカサ・アッカーマン”という名前を聞くと、深い記憶の底で眠っていた映像がより鮮やかに蘇ってきた。
「確か、クレア会ってるはずだよ?ホラ!審議所に入る時にすれ違ったでしょ?黒髪の女の子!金髪の男の子と一緒に。」
今度はハンジが答える。
「あっ……」
確かにクレアは審議所に入る際、2人の訓練兵とすれ違っていた。
ハンジの言う通り、黒髪の少女と金髪の少年だ。
言われてみれば記憶に残っているエレンと一緒にいた少女は、審議所ですれ違った訓練兵と似ていたかもしれない。
そうなると、あの黒髪の訓練兵が自分の顔を見て驚いた表情をしたのにも頷ける。
恐らく彼女はクレアの事を覚えていたのだろう。
しかし、クレアの記憶ではミカサに会ったのは一度だけだった。
「エレンのお父さんは、ミカサの家族と交流があったみたいなんだけど、2人がまだ10歳になる前にミカサのご両親が強盗にあって殺害されてしまったんだ。で、孤児になってしまったミカサをエレンの両親が引き取ったという生い立ちだった。ちなみに一緒にいた金髪の少年、アルミン・アルレルトも2人の馴染みだった様で、今日は揃って尋問を受けていたんだよ。」
「そう…だったんですか……」
クレアは次々と鮮明になる記憶に、目をパチクリさせながら何度も頷いた。