第48章 嫌疑と再会
「では最後だ。君は調査兵団で何かなし得たい事はあるか?」
「………」
なし得たい事。
それは、考えなくてももう決まっている。
「私は調査兵団に所属する1兵士に過ぎませんので、個人的な願望をこのような公の場で公言する事が正しい事なのか分かりかねますが…許されるのであれば1つだけ。…この命があるうちにウォール・マリアを奪還し、シガンシナ区の実家で眠っている両親の遺体をきちんとした形で埋葬し、手を合わせたいと思っております。」
そう答えるとクレアは目を瞑り、スッと敬礼してみせた。
「…いいだろう。では、現時点でクレア・トートは巨人に隠された秘密とは関係性がないとする。しかし、また疑惑が出てきた際には証言台に戻ってきてもらう。それは頭に入れておく様に。これにて閉会…」
ザックレーが席を立つと、窓から差し込むオレンジ色の夕日はすっかりと暗くなり始めていた。
「はぁ……」
審議が終わると、今日1日の思いもよらぬ展開に、ドッと疲れが出てきたクレア。
見張りの憲兵から荷物を手渡されると、ハンジ達が飛んで来た。
「クレア〜〜!!!ごめんね!!いきなりビックリしたでしょ?!」
「ハ、ハンジさん!!」
心配した顔でハンジが抱きついてきた。
リヴァイもエルヴィンもモブリットもミケも皆心配そうにクレアを見ていた。
傍聴席にいた憲兵や駐屯兵には痛いほどの視線を浴びていたため、彼らのいつも通りの雰囲気にホッと安堵する。
「クレア、突然呼び出されるような形になってしまってすまなかった。今日はエレン・イェーガーと係わりのあった人物の審議を行っていたんだが、今朝1番でクレアの情報が上がったらしくてね。すぐには無理だと止めたのだが、壁内の早急な沈静化をと言う事で、出頭命令を止めることができなかったんだ。驚いただろう…本当にすまなかった…」
エルヴィンは何の予告もなしに審議所へ連れてこられた事に心からの詫びを入れた。