第48章 嫌疑と再会
「ザックレー総統、失礼を承知で申し上げますが、今此処で審議している理由がまったくもって分かりません。いったいトロスト区では何が起こったのですか?私はシガンシナ区が襲撃されてからは自分の身の回りの事で精一杯で、イェーガー氏の御家族の安否を確認する事なんてできませんでした。エレンが生きていると知ったのも今が初めてです。いったい何が起こっているのですか?」
すると、ザックレーは咳払いをすると、今回起こった事の顛末をクレアに話始めた。
「…えっ!?…そんな事って……」
ザックレーの口から語られたものは信じ難い出来事だった。
一昨日、壁外調査で調査兵が出払っていた時間に超大型巨人が出現。トロスト区の壁門を破壊。
駐屯兵や104期の訓練兵総出で民間人の避難誘導や入り込んだ巨人の討伐を行ったが、避難完了後、ガスを補充できなくなった訓練兵達の前に突如現れた巨人によって周りの巨人が掃討された。そしてその巨人の項から出てきたのが、間もなく卒業の104期エレン・イェーガーだった。
その場にいた駐屯兵はエレンの殺害を第一優先にしたが、彼が巨人を掃討したのもまた事実。
論争の結果、ピクシス司令の判断により、エレンの巨人化の力を用いて壁門の穴を大岩で塞いだ。というものだった。
一緒に居合わせたエレンの馴染みの話によると、シガンシナ区のエレンの生家の地下室には、どうやら巨人に関する秘密が隠されていると言う事らしい。
その地下室に巨人の謎がある。
しかし、グリシャ・イェーガーはエレンに記憶障害が起こる注射を施した後また行方不明に。
そのため、エレンの周りを調べ尽くした時に出てきたのが、クレアと、クレアの両親だったと言う事だった。
確かにクレアの父親も内地の貴族から指名が来る程の外科的技術を持っていた。
そんな父親と交流のあった内科医が巨人の秘密を持ったまま行方不明となれば、クレアにも嫌疑の目が向けられるのは自然な事だ。
そこでクレアはやっとこの一連の出来事と、審議される理由を理解する事ができた。