第48章 嫌疑と再会
「私の知っているグリシャ・イェーガー氏は、外科医であった父と交流のあった優秀な内科医という事だけです。私が幼き頃にシガンシナ区内で流行った病の対処法を見つけたのはイェーガー氏であったと聞かされていました。それ程までに優秀な医師で、父も私も尊敬をしておりました。」
「うむ、ではエレン・イェーガーについて証言できる事はあるか?」
ザックレーに再度質問をされる。
「エレンに関してはグリシャ・イェーガー氏の御子息と言うことくらいしか…確かに幼かった彼と何度か会った事はあります。ですが、話した内容など…覚えていない程他愛のないものです。」
「そうか…グリシャ・イェーガーは現在行方不明、エレン・イェーガーにも父の行方がわからない上に断片的な記憶喪失を起こしている。君の父親は今どこに?」
「!?」
何故父親の居場所を聞かれるのだ。クレアは訓練兵団に入るときに然るべき手続きをして入団したのだ。調べれば自分が孤児になった事くらいすぐに記録が出てくるはずだ…それなのに何故…
「…私の両親は、シガンシナ区の襲撃で死亡をしております。」
「記録ではそうなっているね…では遺体を確認したのは誰だ?」
「遺体は…確認しておりません。」
すると、またざわめき出す審議所内。
「それは、いったいどういう事だね。」
クレアの返答に目を光らせるザックレー。
「遺体は確認しておりませんが、診療所兼自宅が、破壊された壁の破片で潰れていました。私はその日、母の手伝いで買い物に出ていました。最後に両親の姿を確認したのが自宅兼診療所だったので、あの時は建物の下敷きになったのだと判断し、私は走って逃げました。その後も避難所などで両親と会える事がなかったので、死亡と判断で間違いないと私は思っております。」
「そうか…それでは君の両親とグリシャ・イェーガーが現在この壁内の何処かに潜伏しているという事も全否定はできない…となるが…それに対して異論は?」
「え??」
流石にこの問答に疑問が爆発したクレアは、痺れを切らし核心をつく質問をザックレーに投げかけた。