第48章 嫌疑と再会
証言できる様な記憶や出来事を思い出す事が、すぐにはできなかったが、1つだけ引っかかる事があった。
エレン・イェーガーという名だ。
「エレン・イェーガーとは、医師であるグリシャ・イェーガー氏の御子息のお名前でいらっしゃいますか?」
医師であるグリシャ・イェーガーとは、同じシガンシナ区に診療所を持ち、今は亡き父親と交流のあった内科の専門医だった。自宅に招いて食事をした事もあった。
そして、イェーガーには自分より年下の息子がいた筈だ。クレア自身も何年も前の記憶だが、何度か会っていたのを今思い出した。
しかし、子供は1人だっただろうか…
エレンと思われる少年の隣に、同い年位の少女がいた様な記憶がぼんやりと蘇ってきたが、そこはなかなかクリアになってくれなかった。
しかし、“グリシャ・イェーガー”という名がクレアの口から出ると、ざわめき出す審議所内。
皆の視線はクレアに集中している。
「やはり!お前の父親はグルだったんだな?!!」
「お前は1人娘だったな!父親の事を洗いざらい全部話せ!!」
「こいつも巨人かもしれないぞ!!急いで地下牢へぶちこめ!!」
傍聴席から飛んでくるクレアへの罵声。
「な、なに……?」
言ってることが全く分からない。
「おい!!てめぇら!いい加減にしろ!!」
リヴァイが駐屯兵や憲兵団の兵士に噛み付くが、今度はエルヴィンが制止をする。
しかし、制止はしているが、エルヴィン達は、クレアを心配するような表情で見ている。
少なくても、彼らは自分を信じてくれているのだろう。
兎にも角にも知っている事を全て話さなければこの罵声は収まらない。
クレアは深呼吸を1つだけすると、なんとか自身を落ち着かせながら証言を始めた。