第48章 嫌疑と再会
2人の憲兵の後についていく様にデイジーを走らせるクレア。
逃げ出しやしないかと、途中で何度も嫌な目つきで振り返ってくる2人。
クレアはその度に嫌悪感タップリの視線で見返してやった。
「…………」
やはり憲兵団に進まなくて正解だった。
クレアは訓練兵団時代にハンジと出会わなければ、兵士としての道を辞め、街に働きに出る事を考えていた。
しかし、主席という成績故に憲兵団への進路を強く勧められていたらどうなっていたか分からない。
実際に卒業間近で仲良くなったルドロフは憲兵を希望していたのだ。
ハンジに出会う事なくフラフラとしていたらもしかしたら自分はルドロフに強く誘われ、憲兵団に行っていた可能性もあったかもと考えると背筋がゾッとする。
ルドロフはそうならないと信じているが、クレアの憲兵に対する印象は幼少期からあまりいいモノでは無かった。
父の手伝いでクレアも内地の貴族の屋敷によく出入りをしていた。
そこで会った憲兵の兵士の態度はいつも横柄で、時にはクレアを厭らしい目で見てくる者もいた。
勿論、鈍感なクレアは厭らしい視線を向けられているなど微塵も感じてはいなかったが、父からは「父さんの側から離れないように」とよく言われていた。
憲兵団の兵士が全てそうではない事くらいは理解しているが、権力を振りかざし横柄な兵士が多く存在している事もまた事実だ。
クレアは改めてあの勧誘講義の日に、エルヴィンが急用で来れなくなった事を感謝した。
調査兵団は楽しい事ばかりではない。
だが、自分らしく充実した日々を送れているという事、リヴァイと出会えた事、幸せだと思えることが沢山あったのだ。
クレアは、自分のした選択に間違いは無かったと…心からそう思った。
トロスト区の兵舎を出発したのが午前。
内地の審議所に到着する頃には日が傾きかけていた。
しかし、審議はこれからすぐに行われるそうだ。
クレアは持ってきた荷物を持ったまま引きずられる様に連れて行かれた。