第48章 嫌疑と再会
「ここでの問答は受け付けぬ。さっさと準備をするんだ。」
「………!!」
何を言っても埒があかない上に相手は憲兵。
そしてここにはエルヴィンもリヴァイもハンジもいない。この状況では対等に話をする事も無理そうだ。
クレアは諦めて近くにいた兵士にこの場から抜ける事を伝えると、荷物をまとめるため兵舎の中へ入っていった。
「泊まりになるからそのつもりで用意しろ。」
「はい……」
2人いたうちの1人が部屋までついてくると、泊まりになると告げた。
しかしその憲兵は、カギをあけて中に入ろうとするクレアの背後にピタリとつくと、部屋にまで入ってきた。
「…私は逃げるつもりなどない上に、罪を犯した覚えもありません。何故部屋にまで入ってくるのですか?」
流石に疑問に思ったクレアは真っ直ぐと目を見つめ質問をする。
出頭理由も告げられず、部屋にまで入られたのでは相手がいくら憲兵といえど気分が悪い。
しかし、返ってきた返事は、クレアが納得できるものではなかった。
「この中に巨人の秘密を知る密通者がいる可能性がゼロではないからな。ほらっ、とっとと支度を済ませろ!!」
「巨人の秘密?密通者?なんですかそれは…私は何も秘密など……」
「いいから早く支度をしろ!言いたいことがあるなら総統の前で証言せよ。」
「………っ!!」
クレアは悔しさから思わず唇を噛んだ。
よくは分からないが、自分は何か良くない嫌疑をかけられているのは確かだ。
急いで兵服と下着と部屋着、洗面道具一式を大きめのカバンに突っ込んだ。
そして引き出しにしまってある香油の瓶をカバンに入れようとした時、その手を憲兵に掴まれた。
「おい、これは何だ?!」
「ただの香油です…」
「怪しいな…借せ!!」
「何をするんですか?!」
怒りをあらわにして取り返そうとしたが、背の低いクレアが届かないような高さまで手を上げられてしまうとどうする事もできない。
その憲兵は瓶のフタをあけると、中から香るキンモクセイの香りを軽く吸い込んだ。